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【ブログ】組織の中での「社会統合」~吉山昌

2017.5.8

~難民支援と、「社会統合」への道のり~
私は、認定NPO法人 難民支援協会という、来日した難民を支援するNGOでディレクター・事務局長をしています。私自身は、1999年の立ち上げから関わっていますが、設立当初は、困難な状況にある難民を支えることが最大の目的の一つでした。個々のクライアントの困窮状況を目の当たりにし、できる限りの支援をすべく、関係する支援団体とともに、リソースを確保してきました。住居ニーズにはシェルターを確保し、医療ニーズがあれば、通訳をつけて医療機関に繋げる場合もあります。しかしこれは、難民や移民への対応力が低い、既存の社会を前提にしたものであったとも言えます。

当時から今日に至るまで、現実には難民はこの社会の中で生活をしています。来日後のday1も、数年後も、生活をしています。経済的に自立することも必要です。私たちの事業も必然的に、地域や雇用主となる企業と難民の両方を意識することになりました。
そこでは、「インクルーシブ(包括的)さ」に向けての社会の覚悟を引き出しつつ、同時に社会の新たなメンバーとなる私たちのクライアントにも変化を問うことになります。「社会統合」という言葉がありますが、双方の規範を尊重しつつ疑問を持つことが、その第一歩です。

本来、社会が多様な人々を一員として受け入れること − 支える人・支えられる人がいるのが社会であるし、その関係も常に入れ替わるもの − を目指すならば、まずは地域の様々なアクターの対応力が上がるべく、その力を引き出す機会を作ることが必要になります。
同時に、新たに一員となる人の側の変化も引き出さなければ、地域の心ある人々が、疲弊をしてしまうかもしれません。移民集住都市の医療機関や学校で、そのようなことがしばしば見られます。

しかし、双方が壁を乗り越えた先には、希望もあります。
先日ナッシュビル(テネシー州)を訪問したのですが、そこで前市長時代から開始された、移民に対する”MyCity Academy”というプログラムを教えられました。これは、市の各部門が新たなアメリカ市民に対して教えるという形をとりながら、その実、各部門側が現状の課題に気づく機会となっているとのこと。今や同市は、全米一移民が増える町、と言われるに至っており、現在の市長も政策を継承しています。

私たちの活動でも、例えば、難民が病院に行く、企業で働く、そういう接触の機会で衝突が起こります。そもそも、コミュニケーションから苦労します。そこで支援団体が全てカバーするのではなく、地域の中でお互いが対応できる方法を、間に立って働きかけるようにしています。例えば就労においては、難民に日本語や就労文化を教えつつ、企業内へも働きかけています。その結果、難民を一員とした従業員の力が上がり、例えば企業の国際競争力が上がるといった変化が起こっています。
(ただ、生活を支援する現場では、個々のクライアントと社会と、双方を見据えるのは、簡単ではありません。目の前で現に苦しんでいる一人の人がいるときに、できるサポートを提供しなくて良いのだろうか・・。)

~組織においての多様性の統合~
社会と同様、組織の中でも、外国をはじめバックグラウンドの異なる人がいることで、多くの衝突が起きます。違うチームにいるだけでも、考え方が全く違っていることがあります。難民支援協会でも、出身やチームの違いでの衝突が起きます。一定の価値観を前提にした組織ですので、地域社会よりは判断軸は明確にあります。素早く判断をして、事業を前に進めるべき時も、多くあります。

ただ、この対立に丁寧に向き合って乗り越えられれば、より多くの人が幸福に働ける組織になると、事業の中で経験することから、確信しています。多様性が”統合”される社会を目指している組織として、実際にはまだまだ紺屋の白袴状態です。しかし自らの価値観を組織内外で一貫して実現できることは重要です。多様な人々がともに価値を出していけることは、組織の幸福価値にも、また社会的価値にもつながる「ソーシャルマネジメント」の一要素であると考えていますので、挑戦をしていきたいと思います。

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